かえるの日記

「ミルク壺に落ちたカエルは必死になって脚を動かしました。するとミルクはバターになって、カエルは外に出ることができました。」 でも、落ちたらそのまま浮かんでて、おなかすいたらミルク飲んで待ってたら、だれかがミルクを飲むために壺を傾けてくれるかも?

『生クリームの中の蛙』

この頃気に入っているネット番組がある。鎌倉の古寺円覚寺の管長、横田南嶺(よこたなんれい)さんがやっている『管長日記と呼吸瞑想』というものだ。だいたい10分ちょっとの講話があって、その後1分くらい、呼吸を観る瞑想をする。毎朝リリースされるので「皆さん、おはようございます」から始まり「今日もよい1日をお過ごしくださいますよう」で終わるのだが、私は寝る前に聴いている。管長さんは、ゆったり穏やかかつメリハリのあるユーモラスな話し方をなさる。とても話し方が上手だと思う。それに内容もとても興味深い。これをほぼ毎晩、脚の筋トレをしながら聴いている。筋トレは外反母趾の整体の先生に教えていただいたもので、寝転んでできるのだ。そして最後に呼吸の瞑想をすると、なかなか心がおちついて、眠るのによい。

昨夜もそのようにして、寝転んで筋トレをしながら聴いていた。どこぞの心療内科の先生が書かれた記事についてのお話から入って、スペインのホルヘ・ブカイという人の『寓話セラピー』という本に入っているというお話にすすんだところで、いきなり飛び上がるほどびっくりした。『生クリームの中の蛙』というお話が出てきたからだ。まさに、私が聴いたことのある、あのカエルのお話だった。

2匹の蛙が生クリームの瓶に落ちた。生クリームは重くて、体が沈んでしまう。泳いでも少しも進まない。一匹の蛙は「自分はもう死ぬんだ」と思ってあきらめて沈んでしまった。しかしもう一匹の蛙は、あきらめずに脚を動かし続けた。同じ場所に浮いたままなのに、何度も脚を動かし続けていた。すると、散々脚を動かしていたために、生クリームは固まってバターになったので、蛙はひとっ飛びして瓶から出ることができた。

というお話である。
絶体絶命のピンチでも諦めることなく努力することで、道が開ける、というたとえとして、アドレリアンの間ではなぜか有名なお話である。このような教訓話として私は覚えていたのだが、横田管長さんはさらに深いお話として紹介してくださった。

このお話には「精進努力することの秘訣もあるな、と思いました。」とおっしゃるのである。どういうことかというと、もちろんこの話の一匹の蛙のようにあきらめてはだめであるが、あきらめなかった蛙の努力も、すぐに息が切れる努力では助からなかっただろう、というのだ。努力といっても、息が切れて力尽きてしまうような努力ではなくて、ずっと継続できる、息が切れない程度の根気良い努力精進が大切だと。それが、精進を続ける秘訣になるのではないか、ということだった。

なるほど、本当にそうだと思った。

しかし、絶体絶命の状況で、つまり助かるかどうかもわからない先が見えない状況で、息が切れないような根気良い努力をするって、それこそ大変ではないか? あきらめてしまった蛙とあきらめなかった蛙は何がちがうんだろう?と思った。もちろん、根気かも知れないけれど。。。

それは、「希望を持ち続けること」ではないか?と思った。

アドラーのお弟子さんだったヴィクトール・フランクルは、ユダヤ人の強制収容所で、多分私には想像もできないほどの過酷な状況を生き抜いて、還ってきた。彼は仲間と共に、希望を持ち続けるように努めたという。野田先生は「治療的楽観性」という言葉にして教えてくださった。どんなときでも何か必ずできることがあるということ。希望を持つこと。

なるほどそういう話だったのだな、この話は。ただ頑張れば道は開ける,だから頑張ろう、というのではなくて、大事なのは希望を持つことなんだ。

以前私は、野田先生から何か課題をいただいてその仕事をしていたときに、その課題の大きさに圧倒されて思わず「できるんだろうか。。。」とため息交じりに一人ごとを言ったことがあった。少し離れたところでご自分の作業をしておられた先生はそれを聞くなり、何も言わずにただひとつ「ふん~っ」と大きなため息をついた。その瞬間、私は気づいた。野田先生はこれまでどれほど、「できるんだろうか?」と思うほどの大きな仕事をやってこられたのだろう? ああ、アドレリアンであり続けるなら、これは言うべきではないんだ、と思った。言うべきは、そうではなくて「何かできることがある。それはなんだろう?」だ。

アドレリアンはいつも、希望を観ている。だから、明るい。
そういうところが私はとても好きだ。
今もこれからも、多分いろんな状況に出くわすだろう。
どんなときも希望を持って、精一杯、息が切れないくらいの精進を、仲間と一緒に続けていこうと思う。

 

『寓話セラピー』をネットで探してみたが、残念ながら探しあたらなかった。ひょっとしたら、横田管長さんのお話を結構な数の人が聞いていて、たくさんの人が『寓話セラピー』を求めたのかも知れない。まあ、ご縁があればそのうち読めるだろう。

『管長日記と呼吸瞑想』のあり場所、貼り付けておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=UJvgPSkCoGc